「いやー、面白そうなんだけど、食べ物や飲み物の映像をトイレに表示するっていうのは、どうもねぇ…」
 トイレッツの次の検証試験の場として町田たちが選んだのが、居酒屋だった。居酒屋で販売する食べ物や飲み物の情報をトイレッツのディスプレイに表示して、売り上げ増につなげる。これが、町田が描いた構想だった。

 ところが居酒屋側は、トイレッツの設置は問題ないとするものの、町田たちの計画にすぐさま乗ってこなかった。食べ物や飲み物をトイレッツのディスプレイに表示することに懸念を示したのだ。

 考えてみれば無理もない。飲食店にとっては、トイレ内に食べ物の写真などを表示するのは“場違い”と、客から指摘されるかもしれない。しかも、検証の場となる店は、その居酒屋チェーンの本社ビル内にある。なおさら“粗相”は許されない。

 とはいえ、簡単に引き下がれない町田たちは、写真は掲載せずに、飲食物の名称といった文字情報だけをトイレッツのディスプレイに表示することを提案する。しかも、直接的な宣伝文句ではなく、あえて婉曲的な“川柳風”の表現を用いた。例えば、「揚げたてで、いつでもおいしい、ポテトフライ」といった具合だ。こうした文言を居酒屋側が考え、それをトイレッツのディスプレイに掲載した。

 この方法で2週間ほど検証試験を行ったところ、トイレッツ目当てで来る客も増え、川柳で取り上げた飲食物の注文も増加した。

 論より証拠。この成果のおかげで、ディスプレイに飲食物の写真を表示する許可を得ることができた。