家電、クルマ、住宅やオフィスビルなどの不動産、電気や水道などのインフラ、さらには自動販売機やペットまで、今、あらゆるモノや場所にセンサーが設置され、ネットワーク経由で情報を収集できるようになってきた(図1)。その結果、消費者の行動をマーケティングや顧客対応に生かしたり、従業員の行動を業務改善に生かせるようになってきた。

図1●主なセンサーの例
ヒトやモノなど取得したい情報に応じて、多様なセンサーを利用できるようになってきた

 ソーシャルデバイスを社会的な課題の解決に役立つ技術・仕組みと捉えると、同様のセンサーネットワークを活用するとはいえ、こうした用途は少し違った使い方に見えるかもしれない。ただ、こうした企業の取り組みやサービスによって、消費者/顧客/従業員は従来とは違うライフスタイルやワークスタイルを手に入れられる。その意味では、やはりソーシャルデバイスと位置付けてもよいだろう。ソーシャルデバイスを広義に捉えれば、企業にとっても産業・事業の活性化という課題解決ともいえる。

 そこで本編では、企業の産業・事業活性化、消費者や顧客のライフスタイル改善に向けたソーシャルデバイス活用の事例を紹介していく。利用パターンをまとめると、(1)消費者の行動把握と顧客満足度アップ、(2)消費者の健康情報収集と健康増進、(3)自動車の自動運転、(4)顧客が利用する機器などの状態管理と保守・保全といったものが挙げられる。

 このうち(1)と(2)では、スマートフォンが活躍するケースが多い。スマートフォンは、加速度センサー、GPS(全地球測位システム)、電子コンパス(地磁気センサー)、バーコードリーダーやNFC(近接無線通信)リーダーを搭載した、いわばセンサーの塊だ。同様に自動車でも、GPSからの位置情報、車速やアクセル開度、ブレーキ回数など様々なセンサー情報を取得できる。その最たる応用例が(3)の自動運転である。