線引きが難しくグレーな状態に

 ただし、個人に関する情報であっても、何らかの手段で「いったん個人の特定につながれば、それは個人情報になる」(慶応義塾大学 総合政策学部 准教授の新保史生氏)という点に注意が必要である。サービス事業者が「個人情報には当たらないので問題はない」と考えていても、条件次第では個人情報になってしまう恐れがある。つまり、個人に関する情報と個人情報の線引きは難しく、法的にはグレーな状態なのだ。

 一方、ユーザーにとっては、個人が特定できるかもしれない情報が集められることで、自分の行動が他人に筒抜けになるという不安感が存在する。たとえ個人が特定されない情報であっても、なんとなく気持ち悪いという感情もあるだろう。

 個人に関する情報を活用するビジネスに大きなポテンシャルがあることは、多くの事業者が認識している。しかし現実は、グレーな状態を専門家などが指摘し、ユーザーが不安感や気持ち悪さなどから拒否反応を示すことで、サービスの炎上が起きている。このため、ユーザーからの批判というリスクを恐れて、事業者の多くがサービスに踏み出せないという悪循環も起きている。