2011年後半から、個人に関する情報の取り扱いが原因で、“炎上”するインターネット・サービスが相次いでいる。中でも、“彼氏”の位置情報をスマートフォンに搭載されたGPSなどのデータを使って“彼女”に通知するサービス「カレログ」は、世間を大いににぎわせた。

 彼氏のスマートフォンにアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)を秘密裏にインストールしておくと、本人に気付かれることなく、彼女がパソコン上で位置情報などを確認できる。自分の居場所が無断で他人に知られてしまうという恐怖感に駆り立てられ、カレログの悪評は瞬く間に広がっていった。そして最終的には、総務大臣が「サービス当事者の改善を見守り中」とコメントする事態となった。

 これまでも、位置情報を含む個人に関する情報の取り扱いについては、専門家を中心に議論されてきた。しかし、世間がそれほど関心を持つことはなかった。それが、カレログという具体的な事例が提示されたことで、よりユーザーに身近な問題として認識されたのである(図1)。

図1 データの活用にはユーザーのコンセンサスが必須
個人に関する情報を扱うサービスや機器に、情報を提供することに不安感を覚えるユーザーは少なくない。事例を積み重ねてユーザーのコンセンサスを得る努力が、事業者側に求められる。
[画像のクリックで拡大表示]

 カレログが世間から批判を浴びたことは、個人に関する情報を扱うサービス事業者を戦々恐々とさせた。「スマートフォンに関連するビジネスは急速に動き出しており、プライバシーなどへの対応は後追いになっている。ユーザーは敏感になっているので、急いで対応しなければならない」(あるインターネット広告会社)。

 しかし、個人に関する情報を、事業者がどのように取り扱うべきかについては、明確な基準が存在しないのが現状である。何がよくて、何がダメなのか

 今後は事例を積み重ねながら、「基準をユーザーと一緒に作っていく」(サービス事業者)作業が始まる。キーワードは、ユーザーの“納得感”、つまりコンセンサス(合意)を得ることである。