現実世界がインターネット上に転写される─。今、現実世界の動きをデータ化し、インターネットのサーバーに収集する動きが加速している。その立役者はスマートフォン。利用者とともに移動し、GPSやマイク、カメラ、NFCなど多様なセンサを内蔵するという特徴があるためだ。センサが収集する利用者の行動に関するデータなどを、通信機能を使ってサーバーに送信する。

 今後は、家電のスマート化の流れに乗って、テレビやカーナビなどの情報機器だけでなく、体温計や血圧計などの健康器具、冷蔵庫や洗濯機、エアコンといった身の回りにあるさまざまな家電機器がネットワークにつながる(図1)。こうした機器が吐き出す「生活ログ」をサーバーに集めることができれば、屋内外を問わず、人の動きをより鮮明にインターネット・サービス側で判断できるようになる。

図1 現実世界の転写が進む
家電や健康器具など多様な機器がインターネットに接続されることで、インターネット上にユーザーの生活ログが蓄積され、インターネットからの新しいサービスが提供可能になる。
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 インターネット上への大量なセンサ・データの流入は、インターネット・サービスの競争環境を一気に変える可能性を秘めている。

 現在、インターネット・サービスはWebページの検索やSNSといった文字ベースのものが主流だ。文字以外のセンサ・データを活用するビジネスは、まだ手探り状態だが、データの量の豊富さや多様さは文字データと比較にならない。このため、大きなビジネスチャンスを秘めている。

家電メーカーにチャンス到来

 実は、家電メーカーはこの競争を有利に進められる立場にある。センサ・データを自社のサーバーに集める仕組みをあらかじめ機器に組み込んでユーザーに提供できるからだ。自社で機器を提供していない企業は、機器メーカーに自社のサーバーにセンサ・データを集める仕組みを入れてもらわなくてはならないため、データ集めに苦労する。

 この重要性に気付いている米Google社は家電機器の情報を、Android搭載機器を使ってサーバーに吸い上げる「Android@Home」という構想を、2011年に打ち出している。