10年前、国内のデバイス業界はデジタル家電による好景気で多くの企業が増収増益となった。当時の技術者・経営者が、好業績の中で持っていた業界の問題意識を紹介する。

短期業績●デジタル家電好景気でも低利益率

 国内LSIメーカー11社の2003年度の総生産額は,対前年度比20.7%成長の4兆9555億円,設備投資総額は同59.7%増の7360億円,利益額は112.5%増の3315億円だった注3)

 デジタル家電を追い風に大幅な増収増益となったが,各社の売上高営業利益率は,13.2%の東芝の半導体を除き軒並み一ケタにとどまっている。11社合計の利益率は6.7%の低水準である。シリコン・サイクルから今回の好況のピークと見られる2004年度の予測さえ,利益率の予測は9%にとどまる。相次ぐ増産で好調に見えるディスプレイ各社も変わらない。国内最大手のシャープでさえ,LCD事業の営業利益率は7%台の水準である。20~30%の営業利益率を維持しているIntelの半導体,Samsungの半導体とディスプレイ,台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.,Ltd.(TSMC)の半導体との差は埋まりそうにない。

 2003年度決算は,日本だけを見ていると各社が復活した結果のように映るが,誰もが利益を出せるタイミングだったからに過ぎない。海外の有力な大手に対して,少なくとも売上高や収益力においては相対的には弱くなっている可能性がある。「このままなら2005年後半にも始まる次の不況時に,日本の半導体大手はアジアの有力企業の買収対象になるだろう」。IT分野の調査会社であるアイサプライ・ジャパン社長の豊崎禎久氏はこう推測する。

注3)半導体の国内11社は,NECエレクトロニクス,東芝,日立製作所,富士通,三菱電機,ルネサステクノロジ,エルピーダメモリ,松下電器産業,シャープ,三洋電機,ソニー,ロームである。