自然エネルギー系では,パワー密度がLiイオン電池に比べてケタ違いに低いことから,とても電源として使えないように見える。ところが,ここへ来て積極的に開発に取り組む動きが出てきた。パワー密度が低くても工夫次第では価値が高まり,使い道が広がってくるからである。
その典型例が,産業技術総合研究所(産総研)が開発した透明な太陽電池である(図10)。従来の太陽電池は主に可視光や赤外光を発電に利用するが,代表的なアモーファスSiで発電効率は約7%に過ぎない。これに対し,今回の太陽電池は紫外光により発電し,可視光はそのまま透過する。さらに,赤外光に関しては電圧制御によってある一定波長以上をほぼ100%反射できる機能を持つ。例えば,窓ガラスに応用した時に,照明としての可視光を確保しながら,夏には熱線となる赤外光を反射し,冬には室内に導入して暖房の効果を得ることが可能になる(図11)。このことから,「太陽エネルギーを100%利用できるともいえる」(同エレクトロニクス研究部門長の伊藤順司氏)と言う。
今回,pn素子を試作し,青色および紫外光により発電することを確認した(図12)。光起電圧は波長400nmの青色で最大値を示している。太陽電池としての発電効率はまだ測定していないが,将来的には3%を見込んでいるという注5)。
注5)紫外光による発電を実現できたのは,バンドギャップの大きな透明半導体を利用したためである。n型半導体としてZnO,p型半導体としてCuAlO2を採用した。これらのpn接合素子をガラス基板上に形成した。このpn接合素子のキャリア濃度を電圧などで制御することにより,プラズマ振動で赤外光を反射させることができる。