自然エネルギー系では,パワー密度がLiイオン電池に比べてケタ違いに低いことから,とても電源として使えないように見える。ところが,ここへ来て積極的に開発に取り組む動きが出てきた。パワー密度が低くても工夫次第では価値が高まり,使い道が広がってくるからである。

図10 ●透明な太陽電池を試作
裏側から光を当てて出力を測定した様子。2004年半ばをメドに反射波長を可変制御する基本機能の確認を終える計画である。今回はレーザー蒸着法により,耐熱ガラスが対応できる約500℃のプロセスで形成し,将来的には樹脂フィルム上に素子を形成できる150℃程度の低温プロセスも開発する計画である。日経マイクロデバイスが撮影。
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 その典型例が,産業技術総合研究所(産総研)が開発した透明な太陽電池である(図10)。従来の太陽電池は主に可視光や赤外光を発電に利用するが,代表的なアモーファスSiで発電効率は約7%に過ぎない。これに対し,今回の太陽電池は紫外光により発電し,可視光はそのまま透過する。さらに,赤外光に関しては電圧制御によってある一定波長以上をほぼ100%反射できる機能を持つ。例えば,窓ガラスに応用した時に,照明としての可視光を確保しながら,夏には熱線となる赤外光を反射し,冬には室内に導入して暖房の効果を得ることが可能になる(図11)。このことから,「太陽エネルギーを100%利用できるともいえる」(同エレクトロニクス研究部門長の伊藤順司氏)と言う。

図11 ●太陽エネルギーの波長分布
今回の太陽電池は紫外光を発電に利用し,可視光を透過する。赤外光は電圧制御などにより反射する機能を持たせられる。産業技術総合研究所のデータ。
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 今回,pn素子を試作し,青色および紫外光により発電することを確認した(図12)。光起電圧は波長400nmの青色で最大値を示している。太陽電池としての発電効率はまだ測定していないが,将来的には3%を見込んでいるという注5)

注5)紫外光による発電を実現できたのは,バンドギャップの大きな透明半導体を利用したためである。n型半導体としてZnO,p型半導体としてCuAlO2を採用した。これらのpn接合素子をガラス基板上に形成した。このpn接合素子のキャリア濃度を電圧などで制御することにより,プラズマ振動で赤外光を反射させることができる。

図12 ●透明な太陽電池の光起電圧
青色で最大出力を示す。今回の透明な太陽電池の実用化に向けて自動車メーカー1社,住宅メーカー1社と共同開発を進めており,「2006年にサンプル出荷,2008年に実用化を目指す」(産総研)としている。産業技術総合研究所のデータ。
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