燃料系発電素子は,半導体の微細加工技術を駆使して小型化を実現する要素技術の開発が相次いでいる。

 早稲田大学は約20mm角のSi基板上にダイレクトメタノール型の燃料電池を形成した。特徴的なのが「半導体と同様の考え方で高集積化できるようにした」(同理工学部応用化学科教授の逢坂哲彌氏)ことである。一般的な燃料電池は,メタノールを供給する燃料極とO2を供給する空気極で固体電解質膜を両側から挟むバイポーラ構造となる。これに対し,今回は燃料極と空気極が固体電解質膜の片側の同一平面上に並ぶプレーナ構造になる(図4,図5)。このため,省スペースで簡単に直並列につなげることができるようになった。このような小型の燃料電池を実現できたのは,「Siの微細加工技術,触媒のメッキ技術,電気化学材料技術のすべてを併せ持つため」(逢坂氏)としている。

図4 ●Si加工で形成した燃料電池の構成
約20mm角,厚さ200μmのSi上に燃料電池セルを形成した。東北大学も同様のプレーナ構造のマイクロ燃料電池を開発している。早稲田大学のデータ。
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図5 ●Si加工で形成した燃料電池の外観
固体高分子膜には「Nafion」,集電体にはAu,触媒にはPt―Ru,Ptを採用した。早稲田大学のデータ。
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 今回は,基本的なセルによる発電の動作確認をした(図6)。今後は燃料極と空気極間のリブ(隔壁)の長さやリブが固体電解質膜を加圧する力を最適に設計することによって,メタノールのクロスオーバーや固体電解質膜の抵抗成分による出力低下を抑えていく注3)

注3)触媒の構造や接触面積などを改善し,「将来的には50~100層を積層することによって携帯電話機の動作が可能な1~2Wを達成できる可能性がある」(逢坂氏)と言う。

図6 ●Si加工で形成した燃料電池の動作結果
テスト・セルで測定した。最大出力密度は0.44mW/cm2,Ptの実効面積は1.49cm2。早稲田大学のデータ。
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