電池寿命を気にしなくてもよい世界は,誰もが理想的な姿として求める(関連記事)。それはもはや幻想ではなくなってきた。自ら電気エネルギーを生み出す小型の発電素子を従来のLi イオン電池から置き換えようとする取り組みが,ここへ来て活発になってきた。Li イオン電池では,電子デバイスが身の回りに行き渡る将来像を描くことができなくなるためである。実際に発電素子を,LSI チップ上に載せられるほどに小型化したり,周囲の建造物に設置しようとしたりするための技術開発が相次いで出始めた。それを支えるのが半導体の材料技術や微細加工技術である。

 これまで当たり前のように使っていた電池が不要になる。そのような環境の実現を目指した技術開発が活発になってきた(図1)。人の身の回りに電子デバイスが行き渡る将来像を描く時に忘れがちな議論が,電源をどう確保するかという問題である。

 持ち運べる電源というと今までは電池があったが,電池寿命を考慮すると,商用電源とACアダプタが必要となり,使う場所に制約がある。しかも,現状の最高性能を示すLi イオン電池では技術の進化が飽和状態にあり,小型化することが難しい。

 そこでLi イオン電池の代わりとなる電源として注目を集めているのが,自ら電気エネルギーを生み出す発電素子である。エネルギー源は,すでに世の中にある機械エンジンの燃料や自然現象の中から確保できる。さらに,半導体の微細加工技術を駆使することによって,LSI のチップに搭載できるほどの小型化を実現する可能性がある。

図1●身の回りに小型発電素子があふれる
小型発電素子が身の回りに行き渡ると,電池が不要な環境が実現する。このための技術開発のが活発になってきた。エネルギー源はすでに世の中にある機械エンジンの燃料や自然現象から確保できる。日経マイクロデバイスが作成。