橋梁などの社会インフラは、シミュレーションに頼った設計で造っても“想定外”の現象には脆弱だ。しかし、地震・風や通行による影響を日常的に実測していれば、想定外だった現象に対応する方策を見つけられる場合がある。センサによる実測は、インフラを低コストに強靭化する近道となる。

東京大学大学院の藤野陽三氏
筆者が撮影
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図1 橋やトンネルの特徴
出典:ナノ・マイクロ ビジネス展(7月3日~5日、東京ビッグサイトで開催)と併設の「第19回 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」での藤野氏の講演「社会インフラ(橋・道路等)におけるメンテナンスの重要性とセンサーへの期待」
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 橋は、交通の要所として社会ネットワークに組み込まれており、簡単に架け替えできるものではない。50年以上の長期にわたって安全に維持されなければならない。老朽化した橋の比率が増えるにつれ、その状態をセンサでモニタリングして安全を保つための取り組みが盛んになってきた。そうした先端的な研究を東京大学 大学院工学系研究科 総合研究機構 教授の藤野陽三氏(写真)が進めている。同氏は、2013年7月に開催の「第19回 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」で「社会インフラ(橋・道路等)におけるメンテナンスの重要性とセンサーへの期待」と題して講演した。以下、同氏の講演を編集して紹介する。

 藤野氏は、橋を主な対象として社会インフラを研究対象としている。長大な橋の計画や設計に加え、風・地震や日々の通行による振動、制御やモニタリング、保全・防災といったインフラ・マネジメントに注力してきた。既に瀬戸大橋や明石海峡大橋、レインボーブリッジ、横浜ベイブリッジなど、数多くの橋梁プロジェクトに関わってきた。

 藤野氏は、インフラ・マネジメントの観点から、橋やトンネルの特徴を8点挙げた(図1)。

 第1に、公共性が高く、高い安全性が期待されていること。
 第2に、家電などの量産品とは異なり、一つ一つが異なる仕様となること。
 第3に、地盤や気象、交通の条件など、橋やトンネルが置かれた環境の条件が、一つ一つ異なることである。
 第4に、50年以上使うという、供用期間の長さ。
 第5に、取り替えが難しいこと。第4と第5の条件によって、完成後50年以上の長期間、使い込まなければならず、安全を維持するための工夫が必要となる。
 第6に、長く、大きなものが多いこと。センサを搭載する場合、どの程度の密度で、どの種類のセンサを搭載するのか、組み合わせが膨大となって、取捨選択が課題となる。
 第7に、検査が難しいこと。現在は、目視で検査されており、目で確認できない場所や検査項目への対応が、課題となっている。
 第8に、万が一、事故が起きてしまった場合、及ぼす影響が大きいこと。社会インフラとして、大規模なネットワークの一部を構成しているためである。