東京大学大学院の下山勲氏
筆者が撮影
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日本をはじめとする先進国において、人口の減少や高齢化、インフラの老朽化などは、避けられない課題となりつつある。問題は、財源の制約が強まる中で、いかに医療費の上昇を抑制するか、インフラの維持コストを低減するのかである。そのための方法の一つとして、街や建物のあらゆる場所に、センサなどのデバイスを配置し、最適な制御や低コストな管理を実現する手法について、東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授 下山 勲氏(写真)が示した。ナノ・マイクロ ビジネス展(7月3日~5日、東京ビッグサイトで開催)に併設して開催された第19回 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムにおいて、「社会を変えるセンサーネットワークシステムの未来」と題して講演したものである。

図1
国土審議会 第8回調査会各部会の資料を引用した人口の推移(出展:ナノ・マイクロ ビジネス展(7月3日~5日、東京ビッグサイトで開催)と併催の「第19回 国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウム」での下山勲氏の講演「社会を変えるセンサーネットワークシステムの未来」)
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 下山氏はまず、今後の日本が抱えることになる課題を示した。日本の人口の減少や高齢化と、橋などインフラの老朽化に伴う課題などである。

 まず、日本の人口は、鎌倉時代の696万人から、天保の大飢饉の頃の3100万人、日露戦争の頃の4780万人、第二次世界大戦の頃の約8000万人と増え、2006年に1億2774万人となり、ピークを迎えた(図1)。さらに、日本の人口の年代別の分布を見ると、2010年の30歳~50歳の世代が、2030年には、そのまま大きく減ることなく50歳以上に移行し、最大の勢力となっていく。

 「日本の多くの人が、日本はまだまだ伸びていく国だと思っているように感じている。しかし、日本は縮みかかっている国である。人口は、2006年をピークに減っていき、しかも、高齢化が進んでいく。2025年には約4人に1人が、2050年には約3人に1人が高齢者となり、こうした人口の減少や高齢化による課題が生じてくるだろう。その課題は、おもに社会インフラや農業、健康などに関連するものである」(下山氏)。