(3)の非食用原料への切り替え技術は、将来の食料問題に対応するために今後重要である。非食用原料として最有力候補とみられているのは、セルロースである。植物の茎や木材の主成分であり、地球上に大量に存在している。それらを活用すれば、石油生産量の約30倍となる年間約700億トンという膨大な量の生産が可能になる6)

 セルロースは、デンプンと同じ多糖類であるが、強い分子間力によって熱で溶融せず水にも溶けないので人の食用には適さない。木材由来のパルプとしての原料コストは約60円/kgと、石油の価格に近い。現在は、紙や繊維の主成分として、年間3億トン程度が利用されている。

 有力候補のセルロースでバイオプラスチックなどのバイオ材料を生産しようと、世界の研究機関が手掛けている。セルロースを酸や酵素で分解して、デンプンと同じように糖化しようとする研究が中心である。しかし、分解工程や前処理の微粉砕化工程に手間がかかるため、実用化するには生産コストに課題がある。

セルロースを直接使う

 実は、セルロースを分解せず、直接プラスチックにする技術が、90年以上前から実用化されている。セルロースに酢酸などを付加して酢酸セルロースなどの変性セルロースにした後、石油原料の可塑剤や他の添加剤を混合する手法である。

 質感や選択的ガス透過性などに優れているため、文具や工具、眼鏡フレーム、フィルムなどの一部の汎用製品に使われている。その他にも分離膜やイオン交換体といった特殊製品にも利用が広がっている。最近では、キーボードやステアリングなどの部品への利用も開始された。

 しかし、この配合処方では石油系の改質剤や可塑剤を大量に使用する必要があり、植物成分率が40%以下と低くなる。また、耐久製品に広く使うには吸水時の寸法安定性といった耐水性や強度、耐熱性などが十分でない。製造時のセルロースの化学的処理工程が複雑なため、生産コストの削減も難しい。

 この他の非食用原料を使ったバイオプラスチックとしては、ヒマシ油を原料としたポリアミドがある。優れた耐薬品性や低温特性から、自動車の燃料チューブや衣類の繊維などに使われている。ただし、原料の供給量が限られていることが課題である。