(2)の電子機器などの耐久製品に向けたバイオプラスチックの技術開発として、汎用製品で普及が進むポリ乳酸の改良が検討されてきた。これまでに、燃えにくいポリカーボネートなどの石油系プラスチックを主成分に、ポリ乳酸と難燃剤などの添加剤を混合した「難燃性ポリ乳酸複合材」が実用化されている。

 しかし、この配合処方の難燃性ポリ乳酸複合材は、ポリ乳酸の含有率が30%程度と低いため、石油使用量やCO2排出量の削減効果も同じ割合にとどまってしまう。さらにこの難燃性ポリ乳酸複合材は、コストの面でも課題がある。ポリ乳酸に適した添加剤が少量生産のために高価で、同等機能の石油系プラスチックに比べたポリ乳酸複合材のコストが1.5~2倍程度になってしまうからだ。さらに、耐久製品用の成形性などの他の特性も十分ではなかったため、利用は広がっていない。

 そこで、ポリ乳酸の利用率を高めながら、石油系プラスチックに匹敵する特性を目指した開発が進んでいる。このうちNECは花王と共同で、ポリ乳酸を主体とする新たな難燃性ポリ乳酸複合材を開発した(表1)。

表1 難燃性ポリ乳酸複合材の物性
難燃性ポリ乳酸複合材の特性を改善し、特に課題であった成形性(保持時間、流動性)を従来の石油系プラスチックに匹敵するレベルに高めた。表面硬度は石油系プラスチック以上を実現している。他の特性も電子機器用のレベルを達成した。
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 具体的には、CO2排出量の大きな石油系プラスチックを主成分にするのではなく、ポリ乳酸を主成分にすることにした。すなわち、ポリ乳酸に、難燃剤として土壌成分の水酸化アルミニウムと、少量の炭化剤などを添加している3、4、5)

参考文献
3)http://www.nec.co.jp/rd/innovative/bioplastics/top.html
4)位地,「電子機器用の高機能バイオプラスチックの開発」,『高分子』, vol.61, No.4, pp.195-196, 2012年.
5)位地ほか,「電子機器用の高機能なポリ乳酸組成物の開発」,『高分子論文集』, vol.68, No.6,pp.370-381, 2011年.