樹脂(プラスチック)は、汎用製品から耐久製品まで、幅広い分野で利用が進んでいる。年間生産量は世界で約2.3億トン、日本で約1300万トンと膨大である。

プラスチック=ひも状の長い分子構造を備え、通常、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)などから成る化合物を多数(数十~数万個)連結させたものである。加熱すると溶融できるので、これを流し込む金型の形状により様々な形に成形できる。その際、加熱時の流れやすさや冷却時の固まりやすさなどの成形性、さらに、用途によっては、剛直性や柔軟性、耐熱性(耐熱変形性)、強度、難燃性などの実用特性が求められる。

 ただし、プラスチックの大部分は枯渇が懸念される石油を原料にしており、さらに、製造時や焼却処分の際に大量のCO2を排出するという課題がある。

 これに対して、バイオプラスチックは、再生可能でCO2を固定化できる植物を原料に使っているため、石油資源の保全や地球温暖化防止に寄与する新素材として、注目を集めている。

 原料別に見ると、穀物や芋類、サトウキビなどからのデンプンを原料にするものと、植物の茎や木材の主成分のセルロースなどの非食用の植物資源を原料にするものに分けられる(図1)。

デンプン=α-グルコース(単糖の1種)が多数連結した多糖類の1種であり、水に溶け、分解しやすいため人が容易に消化できるので重要な食糧である。穀物や芋、サトウキビなどに多く含まれる。

セルロース=β-グルコース(単糖の1種)が多数連結した多糖類の1種であり、デンプンと似た構造ではあるが、分子間で強く結合しているため、水に溶けず、分解しにくいので、人の食糧とはならない。また、加熱して溶けず、通常の有機溶媒に溶解しないので、工業原料としても取り扱いが難しい。しかし、植物の主成分(30%以上)であり、地球上最大量の再生可能な有機資源である。

図1 原料別のバイオプラスチックの課題
現在の主要なバイオプラスチックは、デンプンを原料に使用している。今後は、非食用のセルロースなどに原料を切り替えることが必要になるが、現行技術では耐久製品への適用に課題がある。
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 最近では、食品用の包装容器やシート、繊維などの汎用製品でバイオプラスチックの利用が拡大してきた。強度や耐熱性、成形加工性などの特性が石油系プラスチックに匹敵するレベルにまで向上するとともに、生産コストが低下したからだ。その影響で、欧米を中心に年率約30%で利用量が増えている1、2)

 一方、電子機器などの耐久製品への採用は、汎用製品ほどは進んでいない。本格普及には、特性とコストの一層の改善が必要になる。さらに、従来のバイオプラスチックはデンプンを原料とするものが主体であったが、食糧問題への懸念から、非食用の植物資源への切り替えが重要な課題になりつつある。

 そこで本稿は、(1)汎用製品での利用拡大の状況、(2)電子機器などの耐久製品に向けた技術開発、(3)非食用原料への切り替え技術について紹介する。

参考文献
1)http://www.npobin.net/hakusho/2012/trend_03.html
2)石原,「広がるバイオベースプラスチック」,『ARCレポートRS-926)』, 2010年.