首都圏の複数の鉄道事業者は、駅とその周辺の町を活性化しようと、スマートフォンと位置情報を活用した実証実験を繰り返している。キーワードは、「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」。これは、スマートフォンなどに表示するオンラインでの情報が、オフラインの実店舗の購買活動に影響を及ぼすというものである。いずれの実証実験も、各サービスに対応するスマートフォンがあれば、誰でも参加できる。

 このうち東京急行電鉄(東急電鉄)は、ヤフーとトッパン・フォームズと共同で、ICタグを埋め込んだポスター「スマートポスター」を活用して実店舗に送客するサービスの実証実験を、2012年3月26日から約1カ月間実施した。

 スマートポスターにNFCを搭載したスマートフォンをかざすと、駅周辺の店舗のクーポンが表示され、さらに現在位置から店舗までの経路をジオサービス「Yahoo!ロコ」で表示する仕組みである(図2)。実証実験では、東急電鉄の渋谷駅と自由が丘駅に、それぞれ2枚のスマートポスターを設置した。

図2 ポスターにタッチしてクーポンを入手
東急電鉄の自由が丘駅に設置された「スマートポスター」。NFC対応のスマートフォンでタッチすると、各店舗のクーポンを入手できる。店舗までの経路を画面上に表示する機能も備えている。
[画像のクリックで拡大表示]

 これまで、QRコードをポスターに印刷して、クーポンを発行するサービスは存在した。しかし、スマートフォンのカメラを立ち上げて、QRコードにピントを合わせ、情報を読み取るという動作に時間がかかるため、「恥ずかしい」という声があったという。今回、ICタグにすることで、クーポン取得に要する時間を短縮した。

 実験に参加した店舗の中には、これまでクーポンを発行したことがない店舗もある。それらの店舗は、「『スマートフォンを使うような先進的なユーザーの来店を促したい』としてクーポンを提供してくれた」(ヤフー)という。

 東急電鉄では、スマートポスターで用いた仕組みを、スタンプラリーのような複数の店舗や駅を巡るイベントなどへ活用することも検討している。スマートポスターを使えば、「スタンプを用意したりカード・リーダーなどの電源を用意したりする手間を省くことができる」(東急電鉄)。そのため、鉄道沿線を活性化するイベントの開催が容易になりそうだ。