街の随所にセンサを設置し、その情報を基に再生可能エネルギーを効率的に活用する。そんなスマート・コミュニティの実現技術と課題について、現在進行中の実証実験から明らかになった事実をベースに、この実験のコンサルティングを行っている日本能率協会コンサルティングの江原央樹氏が解説する。第1回は、スマート・コミュニティとその基盤技術であるエネルギー・マネジメント・システム(EMS)について。(Tech-On!編集)

 「スマート・コミュニティ」とは、「再生可能エネルギーを効率的に活用する社会」のことである。これを提唱している経済産業省は「再生可能エネルギーを、住宅やビル、交通、ライフスタイル転換など、一連の社会システムとして効率的に活用する社会」と定義している。

図1●スマート・コミュニティのイメージ
出展:経済産業省(http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/smart_community/doc/smartcommu.pdf)
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 この言葉が生まれたのは3年ほど前。東日本大震災以前のことである。震災以前には、世界規模の地球温暖化への対応として温室効果ガスの中でもその排出比率が最も高い二酸化炭素の排出を減らし、低炭素社会を目指すことが求められていたため、二酸化炭素を発生しない再生可能エネルギーの導入が必要だった。震災後は、原子力発電所の稼働停止による電力需給のひっ迫、火力発電活用の強化による電力価格の高騰などの電力に関する問題が顕在化し始めた。電源の多様化による電力の安定供給の観点や海外からの輸入に依存する高価な化石燃料活用による火力発電への依存度を下げるという経済性とエネルギー・セキュリティの観点からも再生可能エネルギーによる電力供給の必要性が高まってきた。

 スマート・コミュニティの実現については、もう一つ重要な意味がある。それは、スマート・コミュニティを実現する手段としてさまざまな事業機会が見込まれることだ。経済産業省が中心となって、新たな事業機会について、国内でさまざまな技術やビジネス・モデルを創造・実証し、海外市場へ輸出することにより日本の産業振興を図ろうとさまざまな支援を行っている。2012年7月1日に始めた再生可能エネルギーの固定価格買取制度FIT(feed-in tariff)注1)の導入はその代表的な支援策である。

注1)日本版のFITは、ある一定期間、ある固定価格で発電された電力量全量を一般電気事業者(東京電力や関西電力など国内10社)が再生可能エネルギー発電事業者から買い取ることを義務付けた制度である。発電事業の費用について初期の発電・変電・送電用設備費用、中長期にわたる運用・保守に関わる部材費用や人件費などを概算で見積り、その総費用金額にある一定の利益率を付加した売上金額をベースに1kW当たりの固定価格を算出。この価格について発電事業者の新規参入を促進するために現在は高めに設定している。例えば、太陽光発電を例にとれば10kW以上の発電能力を持つ事業者の場合、2013年度中に国に発電設備認定がされた場合、事業開始から20年間は1kW当たり37.8円(消費税込)で買い取られる。この場合の発電事業の収益率を表すIRR(内部利益率)は6%であり、20年にわたり手堅く収益が得られるようになっている。多くの事業者が参入を始めており、2013年5月発表の速報値で、2013年2月末において設備認定数は38万4510件、設備認定出力にすると1305万9552kWに上り、中国電力の発電設備容量を上回る規模である。