回路図もコミュニティーで公開

 最近では,エレクトロニクス関連分野でも,同様のコミュニティーが生まれている。インフローは,回路図をデータベース化して公開するWebサイト「@ele(アットマークエレ)」を運営している。会員が登録した回路図に対して,他の会員がコメントを書き込んだり,評価ポイントを付けたりすることができる。回路図は図面のイメージ・データだけでなく,Gerber形式ファイルなどにも対応する。

 もっとも,現状では大きな盛り上がりを見せているとは言い難い。運営を開始してから2年程度たったが,ユニーク・ユーザー数は約1800人,投稿された回路図は130個程度と当初の予測を下回っている。インフロー 代表取締役の田坂正樹氏は,「電子回路製作を趣味にする人は,公開することに抵抗があるのか,あまり回路図を公開したがらない」と嘆息する。

メーカー側も意識変革を

 この理由の一つとして考えられるのが,回路図のようなある意味,企業秘密は公開するものではないというメーカーの考えである。だがUGDを実現するためには,メーカーは回路図などを,むしろ積極的に公開する姿勢が求められる。公開によるプラスの面に目を向けるのである。

 実は,メーカーの身近なところに好例がある。研究成果を発表する場である論文誌や学会である(図3)。論文では成果だけでなく,成果に至る過程や,成果の再現手法も公開することが原則になっている。まねができない,つまり他人が検証できない論文には価値がないとされる。この仕組みを利用して,研究者たちは過去に大きな成果を数多く生み出してきた。

図3 趣味のコミュニティーの発展形態は学会や論文誌に類似
フィギュアのコミュニティーが活性化する仕組みは,学会や論文誌などによって研究が発展してきた仕組みと同じである。
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 学会のようなコミュニティーが身近にあるメーカーがその意識を少し変えれば,UGD時代においても,その発展を促すようなコミュニティーを築くことは難しくないはずだ。