超小型衛星をどうやって打ち上げるのか

 ロケットで大型衛星を打ち上げるとき、ロケットの打ち上げ能力をフルに使い切ることは稀で、通常は余剰な打ち上げ能力を持っている。この余剰リソースを活用して超小型衛星を打ち上げるのが一般的だ。こうした打ち上げ方式は、ピギーバック(=おんぶ)と呼ばれる。低コストで打ち上げられる半面、投入軌道は自分では決められず、メインの衛星によって制約される。要はメインの衛星打ち上げに便乗させてもらうので、行先もメイン衛星の行先で決まるわけだ。ただし、地球観測ミッションの場合には、打ち上げ機会が多いため、要求に合う相乗りロケットを見つけることはそれほど難しくはない。

 また、メインの大型衛星なしに、多数の小型/超小型衛星が集まって打ち上げ費用を折半するケースも増えている。このような打ち上げ方式は「クラスターローンチ」あるいは「ライドシェア(相乗り)」と呼ばれる。衛星打ち上げ市場において、小型/超小型衛星の存在が高まっているわけだ。2013年11月には、合計23個(うち14個はキューブサット)もの小型/超小型衛星がロシアのウクライナ合弁のドニエプルロケットに搭載され、打ち上げられる予定である。 このロケットには、前述した小型衛星「WNISAT-1」も搭載される。

 宇宙機関による超小型衛星の打ち上げ支援も本格化している。日本では、JAXAによるH2Aの相乗り公募が行われている(参考Webページ)。教育・非商用利用なら、打ち上げ費用は無料である。

 NASAでも同様の超小型衛星打ち上げ支援プログラム(ELaNa:Educational Launch of Nanosatellites)が実施されている。また、欧州でもESAが小型衛星用ロケットVegaを用いた超小型衛星打ち上げ支援を行っている(参考Webページ)。

 欧米の超小型衛星打ち上げプログラムは、キューブサットが標準規格となっている。キューブサット規格に準拠していれば、分離機構を衛星側に用意する必要がなく、衛星側、ロケット側ともに調整作業の負担を大幅に低減できる。一方、近年の日本の大学衛星では、キューブサットを卒業して、より高機能な独自のナノ衛星/マイクロ衛星を開発する傾向にある。こうした場合、一般に衛星側が分離機構を開発してロケット側と調整するか、ロケット側で保有している分離機構に合わせて衛星を開発する必要がある。この場合、超小型衛星開発者と、安全管理を行うロケット側の双方に大きな負担となる。

 米国内に限れば、ナノ/マイクロ衛星のロケット搭載インタフェースがUS Air ForceによってESPA(EELV Secondary Payload Adaptor)として標準化されている(下図参照)。キューブサットと同様にロケットの違いによるインタフェースの違いは、分離機構側が吸収するため、超小型衛星側にとっては、どのロケットでも同一のインタフェースで搭載してもらえる。

US Air Forceが定めるナノ/マイクロ衛星とロケット間の搭載インタフェース「ESPA」規格のイメージ
US Air Forceが定めるナノ/マイクロ衛星とロケット間の搭載インタフェース「ESPA」規格のイメージ

 日本においても、打ち上げコストの低減を主眼に開発されたイプシロンロケットの初打ち上げをこの9月に成功させるなど、打ち上げ手段が多様化している。ナノ衛星、マイクロ衛星のロケット搭載インタフェースの標準化はロケット側、超小型衛星側の双方にとってメリットがある。また、宇宙ビジネスの裾野拡大のためには、相乗り衛星の商用利用の解禁が期待される。