衛星を分類

超小型衛星の分類
超小型衛星の分類

 超小型衛星とは、大型衛星・小型衛星と区別するために付けられた日本独自の呼称である。国際的には重量に応じて、より細かな分類がある(右表参照)。ただし、これらの定義も厳密でなく、大まかな目安と考えて頂きたい。

 1トンを超える大型衛星の主な用途は、大型のアンテナを搭載する通信衛星や多数のセンサーを搭載するプラットフォーム型のリモートセンシング衛星(日本のADEOS(みどり)、ALOS(だいち)など)である。2002年に打ち上げられた欧州のリモートセンシング衛星のEnvisatは8トンもの重量に達した。

 1トン未満の中型・小型衛星のクラスでは、科学衛星や光学リモートセンシング衛星に用いられることが多い。

手軽な科学技術テストベット用の1kg級衛星「CubeSat」

 ピコ衛星では、CubeSat(キューブサット)がほぼ標準となっており、手軽な科学技術テストベッドとして活用されている。1ユニット(1U=10×10×10cm)では、リソースの制約が厳しく複雑なミッションは困難だが、3ユニット(3U=30×10×10cm)や6ユニット(6U=30×20×10cm)に拡張することで、より高度なミッションを遂行できる。

2005年に打ち上げられた東京大学のXI-V
2005年に打ち上げられた東京大学のXI-V
(出典:東京大学 中須賀・船瀬研究室)
東京工業大学のCUTE-1.7+APD-IIに搭載されたセンサー
東京工業大学のCUTE-1.7+APD-IIに搭載されたセンサー
(出典:東京工業大学 河合研究室/JAXA宇宙研・東工大連携 松永研究室)
2006年にNASAによって打ち上げられたGeneSat-1
2006年にNASAによって打ち上げられたGeneSat-1
(出典:NASA/Ames Research Center)

 先述したように大型衛星プロジェクトでは、リスクを最小限にするため新規技術の採用を避けて実績を重視する傾向がある。従来は多大な労力をかけて試験やシミュレーションなどによって新規技術の性能・リスク評価(それでも実際の軌道上データとは等価ではない)を行っていた代わりに、低コスト・短期開発の超小型衛星で実際の宇宙での実証データを積み重ねることには大きな意義がある。

 例えば、2005年に打ち上げられた東京大学のXI-Vは、放射線による性能劣化が少ないと言われるCIGS(Cu-In-Ga-Se)太陽電池を1面に搭載し、軌道上での発電特性を評価して良好な結果を得た(試験体はJAXAの電源技術グループが提供)。

 一方、東京工業大学のCUTE-1.7+APD-II(2008年打ち上げ)では、アバランシェフォトダイオード(APD)という新しいセンサー技術を用いて、従来の衛星では十分に観測されていなかった30keV以下の低エネルギー荷電粒子分布を測定した。従来の科学衛星の測定データを上回る高い精度のデータを超小型衛星が取得するのは難しいが、カバーされていないニッチ領域を狙うことで超小型衛星でも大きな科学的成果を挙げることができる。

 また、NASAのエイムズ研究センターでは、CubeSatを活用した科学ミッションを産学連携で推進している。GeneSat-1(2006年打ち上げ)やPharmaSat(2009年打ち上げ)では、3UのCubeSatでバクテリアやイースト菌の宇宙環境での培養実験を行った。このほかにも、一度に多くの衛星を打ち上げることができるCubeSatの特長を生かして、多点同時観測の科学ミッションを公募したり、スマートフォンをベースにしたCubeSat(PhoneSat, 2013年打ち上げ)の開発するなど、NASAエイムズ研究センターは米国の超⼩型衛星の科学利用/技術実証において中心的役割を担っている。