従来の宇宙ビジネスは半官半民的

 宇宙における民間ビジネスも皆無だったわけではない。通信/放送衛星(CS/BS)は長い歴史を持ち、最も身近な商用衛星サービスだろう。特に衛星通信は災害時の通信手段としてその価値が再評価されている。また、日本のような通信インフラの発達した国では実感しにくいが、遠隔地へのインターネット・サービスとして通信衛星が利用されているケースも多い。北米では100万人規模の衛星インターネット・サービス利用者がいるほどだ。

 衛星画像の民間企業による販売は1992年に米国で解禁され、米DigitalGlobe社や仏SPOT Image社がGoogle Mapsなどのインターネット地図サービスに画像を提供するなど、商用での利用が広がっている。しかし、主要顧客はやはり政府機関であるため、安全保障用途には高解像度画像を提供するのに対して、商用には解像度を落としたり、撮影のシャッター権が制約されたりする場合があるなど、半官半民的ビジネスである。

 衛星打ち上げサービスもまた一大宇宙ビジネス分野である。欧州のアリアンスペース社、日本の三菱重工業など、国家プロジェクトで開発したロケットを商用に転用するケースが多い。

 これらの宇宙ビジネスは、国家プロジェクトの成果を活用したり、宇宙機関や関連企業が設立・出資するなど、国家プロジェクトの流れを汲んでいると言えるだろう。