では、国家的事業としての宇宙開発にはどのようなメリットがあるのか。科学技術発展への貢献、国家のイメージ向上、安全保障などの面がある。

国家事業としての宇宙開発のメリット
《科学技術》
・宇宙科学、地球環境などの分野での貢献
・開発した技術の他分野への波及
・要素技術(軽量素材、断熱材、浄水フィルタ、衝撃吸収材など)
 ※通販番組などで「NASA認定のXXX」などの
・設計/製造技術(CAD/CAEなど)
 ※有限要素解析ソフトのNASTRANが有名
・大規模で複雑なプロジェクトのマネジメント技術(信頼性工学、システムズエンジニアリングなど)

《国家イメージ》
 スプートニクショック、アポロ月面着陸、はやぶさの帰還など、純粋な科学技術面の成果だけでなく、それ以上の影響を国内外に与える

《安全保障》
・国際情勢緊迫時の情報分析
・大規模災害発生時の被害把握
・他国に依存しない独自のインフラ
・通信回線
・測位システム(米国のGPS、ヨーロッパのGalileo、ロシアのGLONASS、中国の北斗など)

 こうした国家的宇宙プロジェクトには膨大な予算が投じられてきた。米国の国家宇宙予算を見ると、アポロ計画の突出ぶりやスペースシャトルの高コスト体質(当初は再利用型であるために低コストで打ち上げられると言われていた)がよく分かる(参考:Costs of US piloted programs)。政権交代による波はあるが、近年でも100億米ドル(1米ド=100円として換算すると1兆円)近い予算が組まれている。

 このように従来の宇宙開発事業は、(1)経済的価値に換算しにくいメリット、(2)高コスト、(3)高リスク(打ち上げ失敗、軌道上での衛星故障)と、民間ビジネスになじみにくい構造であり、必然的に国家が中心的な担い手となっていた。