携帯電話機とパソコン(PC)。微細化の恩恵を最大限に受けてきた応用機器において,“非微細化デバイス”が大きな付加価値をもたらす。そのような動きが具体化してきた。

ナノ技術で七変化の携帯を実現へ

 携帯電話機では,最大手のフィンランドNokia Corp.が,2015年ごろの実用化を見据えたコンセプトを明らかにしている(図1)。傘下の研究所Nokia Research Centerが英University of Cambridgeと共同で,ナノテクが携帯電話機に新しい可能性をもたらすことを示した。ここで提示された可能性は,信号処理能力や通信速度の高さ,記憶容量の大きさによってもたらされる性能の高さではない。環境センシング,エネルギー,形状変化など,“More than Moore”技術による多様な機能である。

図1● Nokia の研究所が提示した携帯電話機の将来イメージ
フィンランドNokia Corp.のウェブ・サイトに2008 年に公開された未来の携帯電話機のコンセプト「Morph」。利用シーンに応じて自由に形状を変える。細長く折り畳んだ上でユーザーの腕に巻き付けることも可能である。ナノテク材料を使うことで筐体や電子部品を透明にすることもできるという。Nokia Research CenterとUniversity of Cambridgeのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]

 このコンセプトは「Morph」とNokiaが名付けたもの。nmオーダーのワイヤー(ナノワイヤー)を使ったナノ技術(ナノテク)によって,携帯電話機が将来さまざまな機能を持つ可能性を示している。例えば,ナノワイヤーを分子センサーとして機能させる。手元の食物に有害な農薬が含まれていないかなどを検知して,安全性を確認することができるという。