現実にある道具や構造物は,表面が平らなものの方が少ない。くねくねと曲がった曲面だったり,場合によっては可動したりする。このような場所にアンビエント・デバイスを組み込むためには,デバイスが伸縮自在であった方がよい(図1)。東京大学 教授の染谷隆夫氏の研究グループは,伸び縮みする有機ELディスプレイを開発した。

図1●フレキシブル・デバイスの技術トレンド
さまざまなモノに電子的な機能を付加するためには,電子デバイスの形状が柔軟である必要がある。伸縮自在になれば,あらゆる形状のモノに付加できる。東京大学 教授の染谷隆夫氏のデータ。
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 通常,電気をよく通す材料は硬くて伸びない。逆にやわらかい材料の電気特性は良くない。同氏のグループは,単層カーボン・ナノチューブをフッ素系共重合ポリマーに均一に分散させることで,導電率が最大102S/cm,伸縮率が最大118%の伸縮性導体を実現した注1)

注釈
注1)導電率が102S/cmになるのは,単層カーボン・ナノチューブの濃度が15.8質量%の場合。伸縮率が118%になるのは,同1.4質量%の場合。過去にも同グループは伸縮性導体を開発していたが,導電率は最大57S/cm,伸縮率は最大38%だった。