カリスマ・ユーザーが牽引

 こうした形でユーザー参加型の開発プロジェクトが増え,成功例が積み重なれば,いずれ多くのユーザーから支持を得るプロ顔負けの“開発者”が現れることになるだろう。「カリスマ・ユーザー」の登場である。ブログに例えれば「アルファブロガー」に相当する。

 カリスマ・ユーザーの作品が載ったWebサイトやブログなどには多くの支持者に加え,新製品開発のアイデアを得たい機器メーカーなどが集うことになる。他のネット・サービスと連携することで広告ビジネスが成り立つかもしれない。

UGDへの積極参加が機器メーカーの新たな収益源を生み出す
機器メーカーがUGD開発にかかわる際のビジネスモデルの例。(a)では,要素技術や開発支援ツールなどを提供する代わりに,UGDから新しい機能や使い方などのアイデアの提供を受ける。(b)では,UGDを販売したり,同好の士と交流したりするUGDマーケットを運営する。

 今や,Webサイトの内容に関連した広告を表示するコンテンツ連動型広告や,ネット通販商品などを自分のサイトで紹介するアフィリエイト(成果報酬型)広告などで,普通のサラリーマンの月収をはるかに超える収入を得るアルファブロガーが少なからず存在する。そうした収入や,機器メーカーなどへのアイデア提供で得た収入などを原資に新たな機器を開発するエコシステムが生まれる可能性もある。もちろん,すべての開発活動をボランティア・ベースで手掛けるユーザーも,多く並存することになるだろう。

 いずれは,複数のカリスマ・ユーザーを集めて機器開発サービスを提供する「仮想メーカー」や,ネット・オークションなどの仕組みを使ってUGDマーケットを立ち上げる事業者の登場につながることになりそうだ。

 UGDが究極の姿に進化すると,開発や製造のメインストリームは,「大量生産」一辺倒だった従来型から,ユーザーが自ら考案したモノを開発・製造できる「一品一様型」へと変わる。遅かれ早かれ,UGD時代は訪れる。その時,マス・マーケットを対象にした従来型ビジネスは,戦略の変更を迫られることになる。