UGDを阻む壁が崩壊へ

 この状況が,UGDをメインストリームに押し上げるきっかけになる。楽しいサービスのアイデアを持った個人または少人数のグループが,あくまでもサービス側の視点から自分好みのデジタル家電を開発する。ユーザー参加型の開発コミュニティーが無数に生まれ,世界中の開発者や企業などを巻き込みながら,新しい発想に基づく機器の開発を進める。これがUGD時代の製品開発の姿だ。

デジタル機器開発にユーザーが参加
インターネット上のユーザー参加型開発コミュニティーでは,多くのユーザーが意見を出し合いながらUGDを開発する。メーカーは技術や資金の提供などでコミュニティーを支援する。

 日本でも,サービス側の視点でネット家電を開発するベンチャー企業などが続々と登場し始めている。インターネット接続事業を手掛けるフリービットも,そうした企業の一つだ。2009年春にも,独自の通信技術を組み込んだネット家電を,まずは同社のネット接続会員向けに発売する。「機器と組み合わせた面白いサービスのアイデアを実現するには,大手の機器メーカーを説得するより自分で作った方が早い」と,同社 代表取締役社長兼CEOの石田宏樹氏は話す。

 UGDの開発体制を支える基盤は,機器開発の「開発」「製造」の各プロセスでじわじわと整い始めている。その動きは大きく二つある。開発・製造のアウトソーシング化と,ソフトウエアやハードウエアのオープンソース化だ。これらが,ユーザーが機器を自作する際の大きなハードルになっていた壁を崩しつつあるのだ。

オープンソース・ハードウエアの萌芽
UGD実現のカギを握るのが,ハードウエアのオープンソース化だ。(a)はBug Labs社のモジュール群。(b)はOpenmoko社の携帯電話機の評価ボード「DBoard」。(c)は岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)の小林茂准教授らが考案したハードウエア開発ツール「Gainer」。いずれも,オープンソース・ハードウエアを標榜している。((c)の写真:高尾 俊介)