半導体のコストダウンは止まるのか?

【EUV編(2)】課題は光源の高出力化

  • 大下 淳一、木村 雅秀=日経BP半導体リサーチ
  • 2013/05/24 00:00
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 LPP方式を採用しながら、高い変換効率を強みにするのが、ギガフォトンである。変換効率を高めるプリパルス技術として、Cymer社はCO2レーザを用いるのに対し、ギガフォトンは波長1μm帯のYAGレーザを利用する。「YAGレーザの方が、プリパルスで生じたSn表面のプラズマを透過しやすく、より効率的にSn液滴を砕ける」(ギガフォトン 代表取締役 副社長 CTOの溝口計氏)という。

 さらに今回、プリパルスのパルス・エネルギーをほとんど変えずに、パルス幅を10nsから10psに短縮することによって、Sn液滴を効果的に砕くことに成功した(図19)。パルス幅10nsの場合は、Sn液滴の片面に発生したプラズマのジェットによってSn液滴が押しやられ、円盤状に変形するだけで十分に砕かれなかった。これに対し、パルス幅10psの場合は、Sn液滴の全体が瞬間的に加熱され、Snの蒸気が球状に広がる。Snがより細かく砕かれて表面積が増えるため、続いて照射されるCO2レーザのエネルギーを効率的に吸収でき、強力なEUV光が生まれる。

図19 プリパルスでSn液滴を細かく砕く
ギガフォトンは、プリパルスのパルス幅を従来の10nsから10psに変更することで、Sn液滴を細かく砕き、EUV光への変換効率を高めた。(図:ギガフォトンの資料を基に本誌が作成)
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 実験の結果、パルス幅10nsの場合に比べて10psの場合はEUV光への変換効率を50%改善できた。EUV光への変換効率は平均4.7%と、現時点では世界最高水準の値を達成している。大阪大学のシミュレーションによると、EUV光への変換効率は約8%まで高められる可能性があり、ギガフォトンは今後さらにプリパルスの条件を最適化する。

 ただし、ギガフォトンは製品レベルの光源をまだ出荷できておらず、今回の変換効率は発光の繰り返し周波数が低い実験装置で確認した値である。今後、Sn液滴の生成装置やCO2レーザの改良を進め、2013年以降の製品化を目指す注3)。まずは2012年中に25Wの光源技術を確立し、2013年第1四半期には50Wを達成したい考えである。さらに、将来500Wの高出力化に対応するために、三菱電機 中央研究所と協力し、現在の約5倍に相等する出力40kWのCO2レーザを開発している。

注釈
注3) 製品化に際しては、集光ミラーの寿命を延ばす仕組みとして、強力な磁場を発生させる超電導コイルを搭載する予定である。プラズマで発生した高エネルギーのSnイオンは磁力線に巻き付き、集光ミラーに衝突しなくなる。ただし、この方法ではSnの中性粒子は除去できないため、ミラー表面に付着したSnをガスによってゆっくり化学エッチングする仕組みを取り入れる。なお、プリパルス方式ではSnのイオン化率を約95%に高められるため、Snの中性粒子による影響は少ないという。
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