これまで2回にわたって、スマートフォンやタブレット端末をテレビ向けの次世代リモコンとして活用する「スマートリモコン」について解説してきました。携帯端末のタッチ・パネル操作を生かした直感的な操作で、従来型のリモコンとは異なる新しいユーザー体験を提供する技術です。(前回の記事「わざわざ遠回りする方がうれしい理由」、前々回の記事「スマートリモコンは、テレビの救世主になるか」)
スマートリモコンでは、携帯端末の画面をテレビのセカンド・スクリーンとして用います、これにより、映像の視聴を邪魔することなく、コンテンツを提示し、選択してもらう環境を構築することが狙いです。前回は、携帯端末とテレビやSTBを接続し、スマートリモコンを実現する二つの手法があることを紹介しました。家庭内ネットワークで接続する「ローカル方式」と、家庭の外のブロードバンドを経由してつなぐ「クラウド方式」です。
多くのユーザーが利用できる環境を整える
それぞれの方式には一長一短があります。ローカル方式は携帯端末にアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)を配信すれば、手軽に実装できる点が利点です。ただし、家庭内に無線LANネットワークを敷設していることが前提になるため、相当数の利用できないユーザーが存在します。
NTTぷららは、テレビ向けのエンターテインメント・サービス「ひかりTV」で2012年9月に始めたスマートリモコン・サービス「りもこんプラス」でクラウド方式を選びました。具体的には、スマートリモコン・サービス用に設けたWebサーバーを経由して、携帯端末のアプリとSTBが操作コマンドをやり取りします。(この技術を詳説した『日経エレクトロニクス Digital』の記事「WebSocketの活用で、リモコンをスマートに」はこちら)
わざわざ家庭の外の通信ネットワークを使う手法を採用した最大の理由は、多くのユーザーが利用できる環境を整えるためです。携帯端末の移動通信サービスを用いるクラウド方式は、基本的にユーザーを選びません。加えて、サーバー側でサービスを拡張しやすい利点もあります。
しかし、クラウド方式には大きな課題が一つあります。それは、通信路の品質や、大量のアクセスによるサーバー負荷に起因する通信ネットワークの伝送遅延です。携帯端末とSTB間で単純に操作コマンドをやりとりしただけでは伝送遅延で応答速度が遅くなる可能性があり、リモコンとしては役立たないものになってしまいます。従来型の赤外線リモコンの応答時間は150ms~200ms。これと同等の応答性を実現する技術が必要です。