スマートリモコンの課題は、どこに?

 これらの情報は作品を選ぶ際のヒントとして使えますし、映像を見ながら作品をより深く知るために役立つでしょう。作品について世の中がどのように盛り上がっているのかを楽しむ、いわゆる「ソーシャル視聴」にも活用できます。

 テキスト入力を実現しやすいことも、携帯端末の大きな利点の一つです。作品を探す際にはUIの表示を追っていくだけではなく、作品名や出演者名などから直接探したいこともあるでしょう。その際に携帯端末ならば、あらかじめ標準で装備されているソフトウエア・キーボードや音声入力を利用できます。インターネット検索を使う感覚でコンテンツを探すことも可能ですし、視聴後に作品を見た感想のレビューを投稿することも容易になるわけです。

 このように、携帯端末を活用するスマートリモコンは、従来型のリモコンとは異なるコンテンツ視聴のユーザー体験を実現する高いポテンシャルを備えています。今、スマートリモコンの実現手法として、サービス事業者や機器メーカーはさまざまな仕組みを提案しているところです。

 ただ、スマートリモコンには課題もあります。それは、従来型のリモコンと同等の使い勝手を実現しなければならないことです。従来型のリモコンは長い歴史を重ねてきただけに、非常に完成度が高い。特に大きな利点は二つあります。まず、テレビを買ってきたら、面倒な設定をすることなく、そのまますぐに使えること。そして、応答性の速さです。

 従来型のリモコンの多くは、赤外線通信でリモコンとテレビ、またはセットトップ・ボックス(STB)を直接つないでいます。出荷時にあらかじめ通信の初期設定は済んでいるので、テレビ(STB)を設置した後に特別な設定は必要ありません。

 加えて、リモコンのボタンを押してからテレビが反応するまでの応答時間は150ms~200ms程度と高速です。従来型のリモコンに慣れ親しんだユーザーは応答時間が大幅に長くなると違和感を感じ、サービスの品質低下につながってしまいます。

 この応答性を担保するために、ほとんどのスマートリモコンはテレビと携帯端末を家庭内ネットワークで接続する手法を採用しているのが現状です。いわゆる「ローカル方式」です。この方法は携帯端末向けにアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)を配信すれば、容易に実装できます。応答時間についても、家庭内ネットワーク内であれば、かなり高速に実現できるでしょう。