映像の表示を邪魔しないために

 まず、電子番組表(EPG)や作品情報といったコンテンツに付随する情報を画面上で閲覧する行動です。この情報をメタデータと呼びます。次は、閲覧したメタデータの情報を基に好みのコンテンツを選ぶ行動。従来型のリモコンであれば、ボタンを押す行為です。最後が、コンテンツの視聴になります。

 このコンテンツ視聴の行動に移るまでに、いかに探しやすく、多くのコンテンツに触れられるようにするかがリモコンのUI構築のカギとなるわけです。

 従来型のリモコンでは、ユーザーがテレビ画面上のUIを見ながら三つの行動を順番に実行していきます。その際にユーザーが閲覧するのは、同じテレビ画面上に表示されたUIと映像の両方です。この場合、映像コンテンツを視聴している最中に別のコンテンツを探そうとすると映像視聴に制限が出てきます。テレビ画面上に映像とメタデータの両方を表示する必要があるためです。

赤外線リモコンではテレビを操作する際に、ユーザーは映像とUIの両方をテレビ画面で見る(a)。スマートリモコンでは、映像をテレビ画面で視聴し、テレビの操作用UIを携帯端末で見る(b)。図は、『日経エレクトロニクス』(2013年5月13日号)から。
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 例えば、映像表示を小さくした余白部分に他の映像作品のメタデータを表示したり、映像上にメタデータを重ね合わせたりすることで、ユーザーにコンテンツを選んでもらう方法が考えられるでしょう。現状は、ほとんどのテレビがこれらの方法でリモコン操作を実現しています。ただ、こうした操作方法は、主目的である映像表示に、せっかくの大画面をフルに使えなくなるという課題が残ってしまうのです。

 スマートリモコンの画面をテレビ画面のセカンド・スクリーンとして用いると、この課題を解決できます。メタデータを携帯端末の画面上に表示できるからです。テレビ画面の映像表示はそのままに、携帯端末で他の作品の情報を探し、選ぶことができます。

 前回も説明したように最近の携帯端末のタッチ・パネルでは、「タップ」「スワイプ」「フリック」といった操作が当たり前になりました。メタデータの表示を切り替えたり、選んだりする操作性を軽快に実現できます。ボタンとテレビ画面を組み合わせたUIに比べ、より直感的に、より多くのコンテンツに触れられる仕組みを実現しやすいわけです。

 携帯端末をリモコンとして用いる利点は、もっとあります。携帯端末に表示できるのは、映像コンテンツを選ぶためのメタデータだけではありません。作品に関連した「Twitter」のツイート(つぶやき)情報や「Wikipedia」の解説といった外部のWebサービスから取得した情報もテレビ画面の映像表示を邪魔することなく、携帯端末上に表示できるようになります。