現在、多くのスマートフォンのプロセッサはSoCとして構成されている。その中のプロセッサコア部分は、英ARMの設計によるコアが利用されることが多い。そのほか、米IntelのAtomや、現在では英Imagination TechnologiesがライセンスするMIPSアーキテクチャのものなどもある。

 この3つはAndroidが対応しており、各アーキテクチャ向けのシステムイメージが、米Googleの配布するSDK(開発キット)に付属している。Androidのアプリケーションは、一般にはCPUアーキテクチャに依存しないJavaで開発する。そのためアプリケーション開発者は、CPUアーキテクチャをほとんど意識しなくてもよい。

 しかし、スマートフォンやタブレットを製造するメーカーは、プロセッサの違いを意識しなければならないし、各プロセッサに合わせて自社製品用にAndroidを移植する必要がある。実際には、基本的なAndroidの移植は、SoCメーカー(半導体メーカー)が行っており、ハードウエアメーカーは、どちらかというと追加のアプリケーションやシステム関連のアプリなどを開発して搭載するのが主な作業となる。

 SoCには、グラフィックス(GPU)など、システムの特性を決める多くの周辺回路が統合されており、基本的なハードウエアスペックは、このSoCの選択で決まるといってもよい。特に処理性能などに関しては、使われているプロセッサコアで大半が決まってしまう。

 以下では、主に英ARM、そして米Qualcommのコアアーキテクチャを見ていく。

「設計」をライセンスするARM

 英ARMは、自社ではSoCなどの製品は開発も製造もせず、基本的には、プロセッサコアの「設計」をライセンスするビジネス形態を取る。ただし、そのライセンス形態や「設計」の提供方法には、いくつかのパターンがある。また、最近の多くの半導体メーカーは、自社工場を持たない「ファブレス」企業であり、製造を台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)や米Global Faundaliesなどの「ファウンダリー」企業に委託する。

 このためARMはファウンダリーと協力し、ARMのコアを簡単に統合できるようにしている。コアの製造はファウンダリーに依存するものの、SoCにすることで周辺回路に独自性を持たせることができるため、同じファウンダリーを使う企業とも競合が可能になる。

 逆に、自社工場や関連会社が製造能力を持つような半導体メーカーは、独自プロセスを利用して他社と差別化することも可能だ。さらに、ARMのライセンスには、アーキテクチャそのもののライセンスもある。そのため、同じ命令セットを実行できるプロセッサをまったく独自に開発することもできる。