組み込みソフトウエア開発のユビキタス。同社 代表取締役社長の川内雅彦氏は,創業8年目を迎えた2009年秋に初めて特許の出願を決断した。

 キッカケは,米Google Inc.のソフトウエア基盤「Android」を搭載した携帯機器や家電の高速起動技術を開発したこと。起動時間が約1秒と従来技術よりも格段に高速なことが特徴だ。それまでは,特許性のある技術を開発しても,あえて特許を出願していなかった。標準技術を使う通信関連分野を扱うことが多く,周辺の実装ノウハウに関連した新規技術がほとんどだったからだ。

 「ソフトウエアの実装ノウハウは,特許を見た他社が迂回手段を容易に実現できてしまう。特許で公開しない方が,自社の強みを保護しやすい」と川内氏は見る。

 特許戦略を転換したのは,開発した高速起動技術で新たな分野の事業を立ち上げるためだ。通信分野から,よりハードウエアに近い技術分野に新規参入するには「特許での保護が重要になる」と川内氏は判断した。独自技術の先進性を売りに,機器メーカーとの連携を強める狙いだ。