先発明主義は幻想だった

Harold C. Wegner氏
米国弁護士
米George Washington University Law School 元教授

 2005年に最初の改正案が出されてから、実際に改正されるまでに6年掛かった。製薬業界とエレクトロニクス業界で特許制度に対する意見の相違があったことが大きい。この数年は法改正の可能性は極めて低いと話し続けてきた。

 ここにきて、二つの業界が歩み寄ったことで、今回の改正に至った。先願主義については、先発明主義の方が有利な大学やベンチャー企業などは残念に思っているだろう。迅速に特許出願する手段を持たない人々は、戦略変更を余儀なくされるからだ。「どうしていいか分からない」とパニックに陥っている。だが、彼らは変わる必要がある。先発明主義は幻想だからだ。

 法改正は、しばらく米国の特許制度に混乱をもたらすだろう。先行技術や特許性の定義について、USPTOでは決められない曖昧な文言が法律にある。グレース・ピリオドの制度で定めた「公開」は好例だ。前回(1952年)の大改正では、改正部分に関連する訴訟で最高裁判所が最初の判例を1966年に出した。つまり、14年掛かったわけだ。

 異議申し立て制度の施行を受けて、自社の特許と競合他社の動向を精査した方がいい。準備を怠ると、大切な特許を失いかねない。(談)