【Column】 世界的にも利便性が高い改正だ

Randall R. Rader氏
米連邦巡回控訴裁判所(CAFC)、Chief Judge

 東京で開催した日米の知財裁判に関する会議は、互いの知財制度を理解する上で、とても歴史的な出来事だった。裁判官が弁護士や弁理士と話し合う新たな機会になるだろう。日本で最初に開催したのは、知財分野の世界のリーダーで、知財高裁を保有していることが大きい。日本を皮切りに、今後は中国や韓国、ロシア、ブラジルなどでも同様の会議を開催する計画だ。

 先願主義への移行は、世界的に見ても利便性の高い改正だと考えている。米国で「発明者は誰か」を議論しなくてよくなるからだ。真の発明者を決める「インターフェアレンス」と呼ぶ手続きは、多額の費用と長い期間が必要だった。今後は、特許の出願日を基本とした分かりやすい制度に変わる。発明の新規性を議論する先行技術の判断材料も他の国の制度と同じになる。USPTOの特許審査も、迅速に進むだろう。

 法改正で大きな点は、異議申し立て手続きの多様化だ。再審査のための手続きが増えたことで、より強い特許の取得につながる。

 新しい手続きを円滑に進めるには、その運用方法や、手続きに掛かる期間などを定めた多くの運用規則が必要になる。それらは控訴審などを通じてCAFCに持ち込まれる。我々は、それが法にのっとって公正かつ適正なものかを確認しなければならない。その吟味には、今後数年が必要だろう。(談)