【Column】 トロール対策で駆け込み訴訟が急増

 新しい米国の特許法では、パテント・トロールへの対策も複数盛り込まれた。例えば、特許の虚偽表示に関する条文(292条)は、その一つ。米国では、製品に用いた自社の特許番号をパッケージなどに記載する規定がある。その特許の期限が切れても、その表示を消し忘れる企業が少なくない。これを虚偽表示として訴え、罰金から利益を得る「マーキング・トロール」と呼ばれる種類の訴訟がこの数年で急増している。

 個々の違反について最高500米ドルの罰金を支払う必要があり、違反した企業は巨額の損失を被りかねなかった。このため新法では、虚偽表示の訴訟を米国政府だけが提起できると限定した。

 特許訴訟で多数の被告を相手取る際の条件を限る規定も加えた。パテント・トロールは訴訟費用を抑えることを目的に、複数企業を対象にした1件の訴訟にまとめる例が多いからだ。

 これらの規定は2011年9月16日の新法成立後、すぐに施行された。このため、直前には駆け込み訴訟が多発したという。その対象になった国内の大手メーカーは、かなり多いようだ。

 この他、異議申し立て制度の新設でUSPTOによる特許の無効審査の活用が増えることが、トロール対策に効果があるとの見方もある。USPTOでの再審査中は特許訴訟の審議が進まず、審査結果を待つ可能性が高い。このため、短期間に和解に至る例が減ると考えられる。