リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反抗体制を整えつつある。

 「日経ビジネス」「日経Automotive Technology」「日経エレクトロニクス」の3誌は、円安の追い風を受け始めた日系自動車メーカーの今後の戦略を「新興国攻略」と「規制対応」という2大テーマに焦点を当て、書籍「徹底予測 次世代自動車2013」にまとめた(書籍の詳細はこちら、雑誌読者の方はこちらから割引価格で購入可能、出版記念セミナーの詳細はこちら)。

 このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていく。3回目はターボチャージャーについて。

 燃費の悪いスポーツカーの代名詞だったターボチャージャー。だが、小型エンジンを強力にできるターボチャージャーは、今やエコカーの切り札に大変身した。その具体的な仕組みを見てみよう。

 「ターボチャージャー」とは圧縮した空気を送り込み、エンジンパワーを増大する「過給機」と呼ばれる装置だ。この言葉を聞いて、1980年代に流行した、燃費は悪くとも大きなパワーを誇るスポーツカーを思い浮かべる人は多いだろう。その後、バブルは崩壊し、エコロジー意識が高まる。イケイケドンドンという時代の空気は変わり、それに呼応するようにターボチャージャー人気も下火となった。

 ところが今、そのターボチャージャー市場が急成長に転じている。世界4強の1社であるIHIは「2011年のターボチャージャー世界需要は2200万台だったが、2015年は3500万台になる」(車両過給機セクター企画部の武井伸郎部長)と見る。

 ターボチャージャーが最初に息を吹き返すキッカケを得たのは、2000年頃だ。欧州で厳しくなる環境規制に対応するためエンジンの「ダウンサイジング」が始まったのだ。

ターボチャージャーの仕組み
エンジンのシリンダー内の燃焼で放出された排ガスの流れを、羽根車のついた「タービン」で回転運動に変換。軸を通じて羽根車のついたコンプレッサーを回転させることで空気を圧縮。それをシリンダーに送り込むことで燃焼効率を高める