リーマンショック以降の超円高や東日本大震災、タイの大洪水、尖閣諸島を巡る中国との摩擦など、日系自動車メーカーは逆風に晒され続けてきたが、アベノミクスによる円安効果もあり、徐々に反抗体制を整えつつある。

 「日経ビジネス」「日経Automotive Technology」「日経エレクトロニクス」の3誌は、円安の追い風を受け始めた日系自動車メーカーの今後の戦略を「新興国攻略」と「規制対応」という2大テーマに焦点を当て、書籍「徹底予測 次世代自動車2013」にまとめた(書籍の詳細はこちら、雑誌読者の方はこちらから割引価格で購入可能、出版記念セミナーの詳細はこちら)。

 このコラムでは、円安の追い風を受ける日系自動車メーカーの戦略や世界の自動車産業で起きている技術革新、規制動向などを見ていく。2回目は超小型モビリティについて。

 国土交通省が旗を振る「超小型モビリティ」が進まない。それでもメーカーは動き出している。現在ある法規の枠を使い、新製品を市場に出している。

 トヨタ車体の「コムス」を筆頭に、光岡自動車の「雷駆-T3」、タケオカ自動車工芸の「T-10」、淀川製作所の「Meguru」などがそれだ。姿のあるミニカーから、まだ姿を現さない「超小型モビリティ」が見えてくる。

 2012年6月、国土交通省が「超小型車モビリティ導入に向けたガイドライン」を発表した。また、観光や訪問医療に同省が認めた「超小型モビリティ」を使う自治体や企業に対して半額を補助する制度が、2013年度から始まる。軽自動車よりも小さいクルマの普及を目指す動きが目立ってきた。

 ただし、“なだれを打って”という勢いにはなっていない。国土交通省が新しい車両区分を打ち出せないでいるためだ。

 参入を目指すメーカーは「軽よりも小さい代わりに税金も安い」車両区分が出てくることを期待する。どんな寸法、どんな衝突基準、どんな税制になるのかを見て、参入するかどうか判断し、設計に着手したい。

 ところが、今のところ国土交通省が具体的に動いているのは、今まで公道を走れなかった車種を「軽自動車として認める」という形の規制緩和にとどまる。これは2012年度中を目指している。

 新しい車両区分ができるかどうかは明言しないのだが、できるとしても2015年以降になりそうだ。軽自動車業界との利害調整、税制、海外の圧力など難しい交渉をする必要があるので、同情の余地はあるのだが、時間はかかりそうだ。

 国土交通省の動きを待たず、民間では“ミニEV(電気自動車)”を商品化する動きが目立ってきた。2012年7月、トヨタ車体は新型「コムス」を発売した。10月には光岡自動車が「雷駆-T3」を発売する。タケオカ自動車工芸は「T-10」、淀川製作所は「Meguru」をそれぞれ販売している。

 ミニEVというのは「原動機付自転車四輪」「側車付二輪自動車」など、古くからある車両区分を利用して生産している小型EVを呼ぶことが多い。国土交通省の言う「超小型モビリティ」には属さない。

 ともに運転には普通免許が必要だが、車検・車庫証明は要らない。ヘルメットを着用する義務はない。