メルコ(本社静岡県磐田市、2012年4月に親会社のヤマハ発動機が吸収)の戦略はズバリ、人材力の活用だ。沖縄県の豊富な人材と金型技術研究センターが提供する研修を活用し、グローバルに拠点を展開する顧客を相手に、活躍できる技術者を急ピッチで育成することである。

  メルコが特別自由貿易地域の賃貸工場に入居したのは、工場の完成と同時の2010年7月だ。ただし、若手人材に研修を施す「金型人材育成事業」は2009年7月からスタートしており、同社はこれに開始当初から参加していた。その2009年から沖縄県での雇用を始め、3年間で7人の若手技術者を獲得した。

海外工場のニーズに応える

 メルコが想定している沖縄拠点の役割の1つは、主要顧客であるヤマハ発動機の海外工場をサポートすることだ(図1)。まず、沖縄で獲得した人材に、樹脂流動解析や非接触測定機を用いた3次元形状測定といった分析能力を備えさせる。そして、顧客の海外工場から寄せられるさまざまなニーズに対応させるのだ。

図1●メルコは解析・測定技術を持つ人材を急ピッチで育成
3年前に沖縄に進出し、既に7人の沖縄出身者を採用した。うち5人は琉球大学の卒業者。樹脂の流動解析や非接触3次元測定機を用いた検証などができる人材に育ってきた。沖縄拠点では通常の金型設計業務の他に、同社の金型を用いて試し打ちした成形品を海外工場から受け取り、完成具合を検証するなどしている。
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 例えば、海外工場に提供した金型に不具合があった場合、試し打ちした成形品を沖縄に送ってもらい、そこで形状を測定する。そして、測定結果を磐田市の本社へ送り、最終的な判断は本社で下すのだ。 沖縄は、タイやベトナム、インドネシアといったヤマハ発動機の主要海外工場に地理的に近い。那覇空港のそばに24時間稼働の全日空の貨物ハブ拠点ができたことから、緊急のニーズにも対応可能だ。データのやりとりであれば沖縄と本社の距離は関係ないため、この体制が有効に機能する。ただし、将来的には、本社に判断を委ねるのではなく、沖縄の人材自身が最終的な判断を下せるようにするのが目標だ。