日本で造るのか、それとも海外で造るのか─日本と海外のはざまで葛藤を続ける日本のメーカーに、一石を投じる金型業界の取り組みが今、注目を集めている。舞台は、日本最南端(有人)の地、沖縄。本島中部東海岸にあるうるま市の特別自由貿易地域(特自貿)内に2010年7月に誕生した、青い屋根がトレードマークの小さな工場棟である(図1)。
工場棟自体は1つの建物だが、内部が400m2ごとに6つに区分されていて、それぞれが長屋のように横に連なっている(図2)。そのうちの1つは、沖縄県が同年4月に組織化した「金型技術研究センター」。残りの5つが、金型関連企業が入居できる賃貸工場だ。そこには現在、金型メーカーなど4社が入居しており、同センターと密に連携を取りながら、生産活動や技術開発活動にいそしんでいる。
これだけだと、沖縄県内の産業振興を目的とした産官連携の取り組みのように思える。もちろん、その狙いも確かにある。しかし、取り組みに参加するメンバーたちが見据えているのは、そのもっと先、「日本のメーカーが世界市場で勝ち残る競争力を手に入れること」にある。彼らがここまで考えるのは、日本の金型業界がある深刻な問題を抱えているからだ。沖縄での取り組みは、そこから脱する1つの挑戦と言える。