携帯電話機などに搭載される小型マイクECM(electret condenser microphone)市場で大手3社の一角を占めるホシデンが,MEMSマイク市場への参入を果たした。ドイツInfineon Technologies AGと共同でデバイスを設計・開発し,ホシデンのブランドでMEMSマイクの販売を展開していく。

「前工程に付加価値はない」

 ECM市場で成功を収めたホシデンがMEMSマイクに取り組んだのは,携帯電話機向けをはじめとする小型マイク市場でECMからMEMSマイクへのシフトが進むと見たためである。同社は,直径が4mmで高さ1mmのECMを2006年に製品化した。また,直径3mmで高さ1mmの試作も同年に済ませている。

 しかし,この直径3~4mmで高さ1mmがECMでは小型化の限界と,同社は見る。今後,携帯電話機メーカーには,さらなる小型品を提供していく必要があり,小型化の余地があるMEMSマイクの製品化を決めた。

 同社にとってMEMSマイクは新しい技術ではない。ECMが開発された30年ほど前から,音圧センサーとなる樹脂薄膜の代わりにSi薄膜が使える可能性があると,同社では考えていた。しかし,感度やS/N(信号体雑音比)などの音響性能でECMに追い付かなかった。このため,MEMSマイクが市場に出ることはなかった。しかし,米Knowles Electronics社が製品化した2002年には,MEMSマイクの性能はECM並みに向上していた。