リーマンショック前の好景気のころ、多くの企業で技術者が不足し、設計開発の現場でも派遣など非正規雇用の形で活躍する技術者が増えた。3次元CADの運用に関しても、『日経ものづくり』の調査によれば約半数の企業が「正社員も非正規雇用者も、区別なく3次元CADを使っている」と回答している。つまり、非正規雇用者は社員の指示に基づいてモデリングだけをこなしているわけではなく、実質的な設計作業を担当している実態がある。

* 『日経ものづくり』2010年6月号「数字で見る現場」での調査(回答数577)で、正社員と非正規雇用者の役割分担をCADについて聞いたところ、48.0%が「特に区別なく利用している」と回答した。

 むしろ社員は管理業務に回り、本質的な設計業務は専ら非正規雇用者、という設計現場が珍しくなくなっていた。その結果、社員にノウハウが蓄積できず、非正規雇用者の雇い止めや退職とともにノウハウが失われる、という問題が起こっている。

オペレーターか、技術者か

 もともと3次元CADに関しては、自動車メーカーなどを中心として、操作を専任で担当する職種(オペレーター)がある。細かいCADの操作を設計作業から切り出して付帯的業務として分離し、これを専任の担当者に任せるという考え方だ。非正規雇用者をCADオペレーターとして採用するのなら、ノウハウが失われるとしても、それはCADの操作に関することだけである。

 ただし最近増えてきているのは、オペレーターではなく、技術者不足のために非正規雇用者の助けを借りる企業だ。非正規雇用の技術者の側にも、3次元CADの操作だけではなく、もともと設計の能力を持つ人材が増えている。このような場合、以下のような状況が発生する()。

図●アイデア出しには正社員と非正規雇用者の区別はない
イラスト:モリナガカツトシ
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