すべての3次元データをゼロから新規に作っていては、設計現場の負荷は多大なものになる。ここで鍵を握るのが、「設計とモデリング方法の標準化」(三洋電機生産技術本部開発プロセス革新部設計システム課課長の前田剛氏)だ()。このうち、前回は設計の標準化について触れた。今回は、もう1つのモデリング方法の標準化について紹介する。

図●設計者の負担を減らす鍵を握る2つの標準化
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エラーを減らして流用しやすく

 モデリング方法の標準化は、既存の3次元データを流用して編集するときのエラーを減らせるのが最大のメリットだ。3次元CADには大別して、モデリングの履歴を保持するヒストリーベースのものと、同履歴を保持しないノンヒストリー・ベースのものがあるが、ヒストリーベースの3次元CADの場合はこの履歴がしばしば編集時のエラーの要因になる。

 例えば、ある3次元データにおいて、溝の中心線からの距離を指定して突起を作成していたとする。このデータを流用して溝のない部品を作ろうとした場合、単純に溝を消去しようとするとエラーが発生する。溝の消去と同時に突起の基準も消滅してしまうからだ。

 このように、ヒストリーベースの3次元CADでは、各部の形状(フィーチャ)がどのような順番で何を基準に作成されていったかの情報を、モデリングの履歴として保持する。このため、各人がばらばらの方法で3次元データを作っている場合、他人が作成した3次元データはモデリングの履歴が不明なため、流用するのが困難になるのだ。

 それでも、あえて流用したいということであれば、その履歴を解析して理解しなければならないが、その解析作業は簡単ではない。要するに、他人が作った3次元データでも容易に流用できるようにするには、モデリング方法を標準化しておくことが重要なのである。