ITツールを用いて設計検討を前倒しで実施するフロントローディングは、短い期間で良い製品を開発する上で王道ともいえる方法だ。しかし、その検討を実施するのは誰かといえば大抵、設計者自身。生産技術部門や購買部門の担当者が検討を始める前に、独自に製造性やコストなどの情報を収集し、検討を始めるというスタイルになる。

 これは、生産技術や購買の担当者が担っていた仕事の1つが設計者に移る、つまり設計者の仕事が増えることを意味する(図1)。一つひとつの検討に時間をかけられず、甘くなって手戻りを誘発しかねない。

図1●フロントローディングで忙しくなる設計者
イラスト:モリナガカツトシ
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 さらに、設計初期にはまだ情報が少ないため、設計上のさまざまな決定のための情報が十分に得られない。仮に情報が得られても、後で状況が変わる可能性もある。従って、早期に検討して設計内容を決定すればそれでよい、とはいえない。

 いずれにしても、現在のやり方でフロントローディング本来の目的である「手戻りの削減」が十分に実現できるかというと、疑問がある。