「IT導入で効率が上がるはずだったのに、現場はかえって多忙になってしまった。慢性的に疲労がたまり、目の前の作業をこなすだけで精一杯の状態だ」

「IT導入で競争力が向上するはずだったのに、現場は同じようなものを繰り返し作るだけ。今では、ノウハウやアイデアがさっぱり出なくなってしまった」

「IT導入で情報基盤を整備するはずだったのに、肝心の情報が現物と一致せず、信頼性に欠ける始末。現場では、同じ過ちやムダな作業が繰り返し起こる」

「IT導入でコストが削減されるはずだったのに、現場ではそれにかかわる管理費などが増加している。ITで財布の中身はかえって寂しくなってしまった」

あなたの会社は、こんな症状ありませんか?
イラスト:モリナガカツトシ
[画像のクリックで拡大表示]

 あなたの会社は、上記のような症状に、心当たりはないだろうか。いずれも、ITの利用経験を積むにしたがって生じるものだ。単にITがうまく動いていないというだけでは、これらの症状が出ることはない。その症状が現れるには、原因がある。本来やってはいけないことをやっていたり、落とし穴にはまったりしていることがある。

 本特集ではその原因別に、多くの企業で最近見られるようになった現象と、その対処法を見ていく。原因といっても多くのケースでは、誰が見ても明らかな間違いだと、はっきり分かるようなものではない。ちょっとした考え方の差が大きな結果の違いを招いている。そんな、どちらにでも転ぶような要素がものづくりのITには多い。逆に言えば、ITへの取り組みは常に裏目に出る危険性をはらんでいる。そこを考慮して初めてITのメリットを享受できる。