試作機の変容

図A\-2 初期の試作機(Phase\-1)構造<br>当初は,スコット・ラッセルのリンク機構になっていなかったため,ボイス・コイルが揺れるという問題があった。振動板の最大振幅の大きさに比べ薄型化はできたが,振動板の裏に磁気回路があるため,通常方式の限界を超える大幅な薄型化は困難であった。
図1 初期の試作機(Phase-1)構造
当初は,スコット・ラッセルのリンク機構になっていなかったため,ボイス・コイルが揺れるという問題があった。振動板の最大振幅の大きさに比べ薄型化はできたが,振動板の裏に磁気回路があるため,通常方式の限界を超える大幅な薄型化は困難であった。
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 試作1号機(Phese-1)の構造を紹介しよう(図1)。最初のリンク構造は振動板に向かって平行四辺形になっているだけで,下部固定端に向かうリンクがなく,スコット・ラッセルのリンク機構とは異なっていた。ボイス・コイルの上下動は,ボイス・コイルを支えているダンパーによって抑制する仕組みだった。そのため,特定の周波数で各パーツが共鳴を始め,ボイス・コイルが激しく上下に揺すられることで磁気ギャップをこすってしまうことが判明した。

 この対策として,中心側のリンク2カ所をスコット・ラッセルのリンク機構とした。その結果,ボイス・コイルの上下方向への揺れは格段に小さくなった。

 この試作機は振動板の下に磁気回路がある構造のため,磁気回路の厚さがさらなる薄型化への阻害要因となっていた。しかも,組み立て手順が非常に複雑で,加工費が高いというデメリットがあった。

 そこで2007年暮れ,これらの問題を解消するために,量産設計者二人に開発を引き継いだ後,第2世代(Phese-2)の構想を始めた。

図A\-3 試作機の変容<br>右側は,初期の試作機(第1世代:Phase\-1)。である。左側は,磁気回路やボイス・コイルなどの駆動源を両サイドに出した,第2世代(Phase\-2)。
図2 試作機の変容
右側は,初期の試作機(第1世代:Phase-1)。である。左側は,磁気回路やボイス・コイルなどの駆動源を両サイドに出した,第2世代(Phase-2)。
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 Phase-1で判明したスコット・ラッセルのリンク機構の有用性を生かし,「駆動部を振動板の下から両サイドに移設しても,ボイス・コイルが上下に揺れにくい」という仮説の下,図2のような新構造で設計を行った。これは,現在の量産ユニットと基本的に同じ構造である。

■変更履歴
記事掲載当初、図2の画像が図1と同じものになっていました。お詫びして訂正します。画像は差し替え済みです。