まだ発展する余地は大きい

 ここまでにHVT方式のさまざまな特徴を紹介してきた。いいことずくめのように見えるが,いくつか解決すべき課題が残っている。本稿の最後に,課題を紹介しよう。我々は,大きく三つの課題があると考えている。

 まず第1の課題は,通常のスピーカーに比べ,中域の感度が約3dB低いことである。HVT方式は,低域感度は通常のスピーカーに比べて上回っている。そ して,原理的には低域から高域までフルレンジで再生が可能になると考えている。しかし,現段階では高域再生が苦手である。これまでは低域再生を最優先して 開発を進めたため,高域再生の課題解決に向けた取り組みはこれからという段階で,重要ポイントとして強く認識している。課題解決に向けて,リンクの形状・ 材質の改良や,ボイス・コイルのインダクタンスの低減などに取り組む。

 第2の課題が,部品点数が増えているので,コスト高の傾向にあることだ。複数個のパーツを一つにまとめるなど,設計・組み立て・部品作製の合理化を進める。

 第3の課題は,今までの生産設備では大量生産できないことである。自動機による生産に移行するため,さまざまなことを視野に入れた取り組みを検討中である。