図6 ユニット方式による不要振動の違い:ダブル・モータ駆動の場合<br>HVT方式は不要振動が少なく,特にダブル・モータ/両面駆動式は不要振動がほとんどない。
図2 ユニット方式による不要振動の違い:ダブル・モータ駆動の場合
HVT方式は不要振動が少なく,特にダブル・モータ/両面駆動式は不要振動がほとんどない。
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 HVT方式は不要振動が少ないことで,「レスポンスに優れ,低域がクリア」「階下や隣室への迷惑が少ない」などの効果を発揮する(図2)。スピーカーに おいて,ボイス・コイルや振動板は「振動系」と呼ばれ,それらが振動するときは必ず反作用として振動系以外の部分に不要な振動が伝わってしまう。

 通常のスピーカーの場合は,振動系全体が同一方向に振幅するため,反作用による不要振動の方向はそろっている。この不要振動は,スピーカー・エンクロー ジャーのバッフル板を通してエンクロージャー全体を振動させ,音声信号と異なる音を発生させる。これは,条件が悪ければ音を濁らせる結果になる。また, エンクロージャーの振動はスピーカー・スタンドを通じて床や壁に伝わりやすいため,大きな音を出すと階下や隣室に迷惑を掛ける原因にもなっていた。

†バッフル板=スピーカー・エンクロージャーの,スピーカー・ユニット取り付け面のこと。スピーカー・ユニットを支持するとともに,スピーカー・ユニットから出る音を反射し,音質を調整できる機能も持つ。

 それに対してHVT方式は機構上,不要振動が相殺されやすく,低振動である。この点について,HVT方式の四つのバリエーションごとにメカニズムを説明しよう。