HVT方式の動作原理

 では,HVT方式の動作原理を紹介しよう。まず,HVT方式の駆動源について見ていく(図2)。HVT方式に使用しているボイス・コイルはフラット・タ イプであり,コイルはトラック形状(渦巻き状)に巻かれている。ボイス・コイルは上下2組のマグネットとプレートに挟まれおり,磁気回路は2ギャップ方式 となる。

†2ギャップ方式=ボイス・コイルに流れる電流と鎖交する向きの磁束を発生させる磁気ギャップ部が2組ある,磁気回路方式のこと。

図4 HVTユニットの駆動メカニズム<br>車載製品に搭載しているウーハーを例に,分解図と側面図を示した。
図2 HVTユニットの駆動メカニズム
車載製品に搭載しているウーハーを例に,分解図と側面図を示した。
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 磁気回路から発生した磁気エネルギーは,ボイス・コイルの2長辺を集中して横切る強力な磁束となる。音声信号が入力されるとフレミングの左手の法則によ り,フラット・タイプのボイス・コイルは水平方向に往復運動をする(駆動源が動電型,いわゆるダイナミック型の場合の説明)。

 ボイス・コイルはリンク機構両端(力点)に連結されており,水平方向の振動をリンクに伝達する。伝達された振動はスコット・ラッセルのリンク機構によって振動方向が直角,すなわち上下方向に変換される。

 リンクの初期角度を変えると,ボイス・コイルの移動量と振動板の移動量の比も所望の値に設定できる。例えば,リンクを立てて設計しておけば,極めて小さな容積のキャビネットを使う場合であっても低域再生限界を,より低くすることが可能だ。逆に,リンクを寝かせ気味に設計しておけば,フリー・エア状況(空気ばねが弱い状況)でより感度が高いスピーカーを得られる。