さらに,HVT方式は「スピーカー・キャビネットの小型化対応が容易」「不要振動が少ない」「理想的な無指向性スピーカーが実現しやすい」など,薄型化と低域再生能力以外にもさまざまな可能性を併せ持つ。

†不要振動=振動板の振動の反作用によって発生する,スピーカー・ユニット全体を押し返す振動のことである。

 HVT方式は,従来のスピーカーを否定するものではない。HVT方式の本質は,「振動板の駆動にテコを介在させる」点にある(図2)。これにより,スピーカー形状の選択肢を増やした。スピーカーの使用目的によって選べる技術の選択肢が追加されたと,とらえてほしい。本稿では,HVT方式の開発意義や機構,応用範囲などを解説する。

図2 HVT方式の動作原理<br>HVT方式は,水平の動きを垂直に変換して動作するスピーカーの技術である。スピーカーに「スコット・ラッセルのリンク機構」 を取り入れ,振幅方向の変換を可能にした。スコット・ラッセルのリンク機構は,英国人のJohn Scott Russell(1808~1882年)が発明した。水平方向の直線運動の入力に対し,垂直方向の直線運動に変換するリンクがあることが特徴である。 HVT方式スピーカーでは,スコット・ラッセル・タイプおよびパンタグラフ・タイプのリンクを取り入れた機構で特許を33件出願済みで,うち1件が特許登 録済み。
図2 HVT方式の動作原理
HVT方式は,水平の動きを垂直に変換して動作するスピーカーの技術である。スピーカーに「スコット・ラッセルのリンク機構」を取り入れ,振幅方向の変換を可能にした。スコット・ラッセルのリンク機構は,英国人のJohn Scott Russell(1808~1882年)が発明した。水平方向の直線運動の入力に対し,垂直方向の直線運動に変換するリンクがあることが特徴である。HVT方式スピーカーでは,スコット・ラッセル・タイプおよびパンタグラフ・タイプのリンクを取り入れた機構で特許を33件出願済みで,うち1件が特許登録済み。
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