常識を覆して機器進化に一助

 21世紀に入り,電子回路やディスプレイなどの発展はますます目覚ましく,身近な機器,例えばテレビやパソコン,ナビゲーションなどの各種デジタル機器は大幅な小型化・薄型化・高性能化が進んでいる。自動車や航空機などの分野では,貴重な居住空間確保を損なわずに快適性を向上させる要求が根強く,電子機器にはさらなる小型化が求められている。

 だが,音声を再生するという重要な役目を担うスピーカーは残念ながら,それら機器の進歩や要求についていけていない。「十分な低域再生とダイナミック・レンジの確保には,大きく重いスピーカーが必要」という常識を変えないと,今後,各種機器の足を引っ張ってしまうことになる。

 従来のスピーカーの設計では,「どのくらいの低音を,どの程度で再生する必要があるのか」が,寸法を決定する大きなファクターとなってしまう。これを解決するべく,今回開発したHVT方式は「薄さと低域再生の両立」という点に最もこだわった。

 量産を開始した75mm×57mm(丸型87mm相当)の振動板を持つダブル・モータ片面駆動の「HVTユニット」を例に取ると,厚さが17mm,最低共振周波数(Fo)は85Hz。同口径の通常のスピーカーは厚さが40~50mm程度,Foは120~200Hz程度である。これらの数値が示すように,HVT方式は薄型でも,より低い音が再生可能であることが分かるだろう。