VPMの基本は、生産性を必ず数値で捉え、見える化することだ。「現状を正確に数値化することができなければ、目標への誘導と制御はできない」という現代科学の基本原理を改善活動に適用したものと言える。製造業やサービス業の現場では、実にさまざまな生産性の指標が使われているが、ここからはVPMで用いる生産性の定義について解説していきたい。
通常、製造部門の生産性は次式で表される。
いわゆる人時生産性といわれている概念である。全工数には、直接作業と間接作業の全てが含まれている。しかし、この生産性の定義をそのまま用いても、大ざっぱすぎて生産性がどのような要因で変動したのか分かりにくいし、分析もしにくい。筆者の経験でも、改善活動が形骸化している企業では、改善の指標として生産性を表示するのみで変動要因までは分析できていないことが多い。
VPMでは生産性を、
と定義する。
これだけで、改善活動に取り組もうとする生産拠点の生産性の実態に迫りやすくなる。生産性が、能力と効率のどの要因で変動しているのかがはっきりするからだ。これら2つのパラメーター、すなわち能力と効率は、直接工数という製造部門にとって大変重要な管理数値によって結びついている(図2)。
こうした生産性の概念を個別の生産工程に適用した事例は、本連載の次回以降で詳しく紹介するが、ここではイメージがつかみやすい学校のケースを紹介しよう。
学校経営の生産性を「生徒の学力」に着目して定義する。すると、
と考えることができる。
この場合、能力は教師の能力そのものを示し、効率は教師を含む学校職員全体の業務効率を示すことが分かる。つまり、学校経営の生産性を向上させるには、[1]教師の能力を上げる(少ない授業および準備工数で生徒の学力を高める)、[2]授業および準備工数以外の工数を減らす、という着目点が浮かび上がってくる。このうち[2]はムダ取りによる改善のイメージに近い。ムダ取りは重要だが、VPMの真骨頂は[1]の能力、言い換えれば人の価値の向上にある。